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2010年11月12日 (金)

家族のケアの力 その2

Kさんのお宅から、すぐ近くにSさん(80台、男性)のうちがある。
糖尿病、慢性腎不全、高血圧症などを持っていたが、この夏、体調不良を訴え、検査で胆管癌がわかった。
手術は不可能。
胆管の閉塞が見られ、ステントを挿入した。
見舞いに来る妻に毎日、「家に帰りたい」と訴え続けていた。

最近は、中核病院からの依頼が多く、退院前にカンファレンスを開いてくれることが多い。
そこで、病院側のスタッフとも顔をあわせ、在宅の側からの問題意識をぶつけ、調整してもらうこともある。
もちろん、患者本人、家族とお会いして、安心して自宅に帰れるようにすることも大きな目的だ。
多くの場合、初対面の患者、家族は不安な表情が多い。
在宅へ帰る不安、症状が悪化したときの不安、それに加えて、初めて出会う医師に対する不安・・・
一回の面談でその不安を取り除くのは難しい。
私は、笑顔と自信がその不安を取り除くのに有効だと思っている。

さて、Sさんと家族の場合はどうだっただろう?

それはともかく、Sさんは自宅に帰った。
すでに足が弱って、立つこともできなくなっており、2階の自室までは介護タクシーのヘルパーたちに抱えられて、ストレッチャーのままで上がった。

家に帰ったSさんの顔には、不安はなく、穏やかさが戻っていた。
それでも、家族の不安と希望の中で、在宅ホスピスケアが始まった。

寝たきりのSさんは、すでにCVポートが留置されており、点滴はそこから行うことができた。
腎不全、糖尿病があり、補液量とインスリンには気を使った。
背部、下肢に浮腫があり、腹水もあり、利尿剤の調整も必要だった。
しばしば嘔吐することもあった。

ホスピス病棟への依頼も退院時に行っていた。
娘さんも、最終的にはホスピス病棟への入院を考えていた。

在宅は、ケアの力を育てる、と実感する。

Sさんの状態は徐々に悪化した。
黄疸が出て、意識の混濁が見られるようになった。
仙骨部、踵などに褥瘡ができ始めた。
2週間くらい前から、昏睡状態に陥いり、反応がなくなった。

私たちは、注意深く奥さんと娘さん(一人っ子)の観察をしながら、声をかけ、介護疲れの度合いを図り、無理のないようにサポートすることを心がけた。
必要ならホスピス病棟への入院を勧めることも考えた。

奥さんは堂々としていた。
娘さんともども、いつもさわやかな服装で、こぎれいにしていた。
娘さんは、10人ほどの従業員を雇い、洋服を作る会社を持っている。
自分たちが着る服は、全部自作です、という。

小柄でやや体が不自由な奥さんも、いつも笑顔で、私は大丈夫です、昼間ちょっとずつ寝ています、と応えていた。

2ヶ月の在宅ケアの間に、在宅での看取りの覚悟が自然に芽生えてきたようだ。
Kさんに続いて、Sさんもこの朝、静かに息を引き取った。

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コメント

どうしてもっと早く気がつかなかったのか残念ですが、これからチョクチョクお邪魔します。
二ノ坂クリニックで検索して見つけました。ヤッホー!
私もヤフーのブログ投稿を始めて1年が経ちましたが、そのブログを見ていて今日はほんとに驚きました。
今朝たまたま、ほんとに偶然にランダムで他の方のブログを覗いたら、なんと二ノ坂保喜の名前を発見したのです。
なんと懐かしいお名前というか耳慣れたお名前と言った方がいいのかも知れません。
ブログ名・木こりさんという方で大分地方での二ノ坂先生の講演プログラムを掲載されていました。
さっき富士ちゃん(奥様)にも電話しましたがオカリナの練習中でした。遅くまで熱心な事で・・・。
とにかくいろんな面でご活躍のようで、なぜか私も嬉しいです。
こちら方面で(東京・町田)講演などをされる機会がありましたら是非声をかけて下さいね。

投稿: 中村敏子 | 2010年11月19日 (金) 23:57

ようこそ、敏子さん、お久しぶりです。
遠路はるばる?お越しいただき、ありがとうございます。
木こりさんは、大分で講演をしたときにお会いした方です。来月また大分に行く予定です。
町田で講演することはおそらくないと思いますが、東京で話したり、学会発表の機会はありますので、ぜひまたお会いしたいですね。
妻も一緒に。

投稿: にのもんた | 2010年11月21日 (日) 23:17

是非是非声かけて下さいね。
注文していた(Amazonですが^^;)二ノ坂さん監修の「在宅ホスピスのススメ」が今日届きましたので、読ませて頂きますね。
相談を受けてる人もいますし、自分のためにも勉強したいと思います。
還暦を迎え色々考えていた矢先なので、なんかワクワクします。

投稿: 中村敏子 | 2010年11月23日 (火) 18:24

中村さん、「在宅ホスピスのススメ」購入いただき、ありがとうございます。
4,5年前の本ですので、少し内容的に古いところもあります。ご了承ください。
またご感想をお聞かせいただけるとありがたいです。

投稿: にのもんた | 2010年12月 2日 (木) 00:21

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