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2009年10月21日 (水)

バングラ報告2009 ④母子保健センターの患者たち

8月19日() 朝礼

ションダニでは、毎朝8時半から朝礼を行っている。最初の頃は時間にルーズだったが、時間厳守をすすめており、今ではきちんと時間を守るようになった。最近はむしろ、日本人の方が遅れがち。

この日の朝礼では、まず昨日の報告から始まった。

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昨日は、外来 33名、入院 6名、うち出産予定が1人、一般患者が5人だった。

またサテライトクリニックでは、11名の妊婦が受診した。

外来に小さな男の子が受診した。パンツのチャックが、ペニスに引っかかり取れなくなった。痛がって取れないため、麻酔をかけて外した、という報告もあった。(笑いあり)

その後今日の予定を確認。大学生を中心にしたグループは、イスラム大学に見学・交流に行くことになった。医療関係者を中心としたグループは、回診と病院内見学、ションダニの中心メンバーとの話し合いをすることとした。

回診

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2人の現地医師が昨夜から見てほしい、といっていた3人の患者を診察した。

最初の患者は16歳の男の子。4ヶ月前に転落事故で、頚髄損傷となり、手足は麻痺している。病院では、治らないと言われているが、家族が「日本からの医師に診せたい」と昨夜から入院している、という。

意識はしっかりしており、こちらを見つめている。手足は全く動かず、上肢は屈曲し、下肢は進展した状態で拘縮している。近寄ると悪臭がする。仙骨部と大転子 部に褥瘡がある。潰瘍を形成し、感染を伴っているからだ。普段は家族が面倒を見ている。脊損の初期に栄養状態が低下し、褥瘡を形成することはよくあること だ。しかし日本の場合は、褥瘡には予防が第一で、褥瘡を作ること自体が、医療関係者特に看護師にとっては恥ずかしいことだという認識がある。年齢から考え ても、何とか治っていくことが多いだろう。ただしそれは、病院や施設、あるいは自宅であっても、きちんとした知識を持った医療関係者の指導があってのもの だろう。栄養、局所のこまめな処置、体位交換などの努力があって、褥瘡は改善する。残念ながら彼には、そのような丁寧なケアは行われていなかった。

も う1点は、拘縮予防の機能訓練だ。脊髄がやられると、屈筋と伸筋を支配する神経が麻痺して、両者のバランスがくずれ、屈曲や伸展した状態で、拘縮を起こ す。自分で動かないとしても、介護する場合に支障を来すことが多い。これも早期からのこまめな機能訓練、手足を動かしたり、マッサージしたりすることで軽 減することができる。患者には、このようなケアはなされていないと思われた。

こ のような患者を診ると、いつも辛い思いをする。家族、本人とも、日本からの医者に診せれば何とかなるのではないか、という必死の思いで連れてくる。これま でにも、白血病の少年や、神経難病と思われる若者などと出会った。日本だったら治せるのではないか、何かいいアドバイスはないか、という淡い期待を持っ て、彼らは私のところにやってくる。

しかし、不治の病であること、あるいは障害が回復不可能であることは、日本でもバングラでも変わりはない。

「機能訓練が必要だろう。褥瘡に関しては、よく洗うこと、感染があるときには抗生剤を使用すること」といった、バングラでも言われただろうアドバイスをするしかない私だった。

2 人目の患者は、30歳の関節リウマチの患者。2年前から発症したという。リウマチ因子が陽性で、特に今回は、右膝関節が痛んで入院した。3日前にここで関 節注射を受けたが、今回は改善せず、痛みがひどくなったという。3日前に何の注射を?とたずねると「メチル・プレドニゾロン」という返事。リウマチなどの 関節炎がひどいときに、関節内に注入することがある。

リ ウマチの治療は最近どんどん進歩している。急性炎症の時期に、関節内の注射は必要かもしれないが、数週間おきに関節内にステロイド剤を注入することは、軟 骨や骨を破壊するのではないか、急性期の治療と同時に、安定期、慢性期の継続的治療が必要ではないか、との思いを現地の医者に伝えた。

3人目は70歳の女性患者は、一目で分かる帯状疱疹だった。発症は15日前ということで、すでに皮膚病変はほとんど痂皮となり、黒ずんでいた。帯状疱疹後の神経痛を訴えていた。痛み止めやビタミン剤で、フォローするようにアドバイスした。

毎 年、日本人医師を目当てに村から、あるいは遠くから患者が相談にやってくる。多くはすでにバングラデシュの病院で診断がくだされ、治療も行われ、回復が不 十分だったり、治癒が不可能だったりした患者だ。今年の頚髄損傷の患者のように、むなしい思いを感じることも多い。2人の現地の医師たちは、かなりがん ばって診療に励んでいるようだ。村人たちの信頼も厚い。願わくば、彼らができるだけ長く村に定着して、村人の信頼を得て、村人もまた、自分たちの健康は自 分たちで守る、という意識を深めていってほしいものだ。このことは、私がバングラ通いを通して学んだように、保健医療の世界共通の基本認識でもあるだろ う。


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