21日(月)は、久しぶりに早く家に帰った。
午後9時からのNHKスペシャル「医療再建」をみたいと、急に思い立ったからだ。
2時間近くの番組で、いろいろと考えさせられた。
医療崩壊、という言葉が、自明のように使われてるが、あたかも「医療」が自然に「崩壊」しているかのような響きの使われ方に、違和感を感じる。
「医療」が本当に「崩壊」しているのか?
だとすれば、それは「自然災害」なのか? 「人災」なのか?
さて番組では、「必要なときに、必要な医療が受けられない」現状、地域間格差、昼と夜の格差、診療科による格差が指摘された。
その原因として医師不足が最初に取り上げられ、その原因は、新臨床研修制度にある、かのような印象だった。
・・・少し制度が変わっただけで、大学病院から人がいなくなるような、そんな魅力のない大学病院なら、そうなっても当然だろうな・・・などと冷たく思いながら、聞いていた。
続いて勤務医の過酷な勤務状況、特に小児科、産科など・・
そして、その結果として、勤務医離れ、開業への流れが指摘された。
この間の「医療崩壊」「勤務医の過酷な現状」の報道を見ながら、今度は「開業医たたき」が始まるな、と予想していたが、案の定。
日本の開業医の、「自由開業」「(診療科の)自由標榜」がやり玉に挙がり、ドイツやイギリスでの開業制限、質の保証がどのようになされているか、レポートが続いた。
日本医師会の竹嶋副会長(福岡出身。早良区で、当院の割と近く)が、「医師の自律性」によって、現在の制度を進めていきたいという意見は、影が薄かった。
「自律性」「自由」を唱えるからには、それに伴う「社会的責任」を果たす必要があることを痛感した。
特に医療は、「社会共通資本」であると言われている。
資本主義に基づく自由な競争に任されるべきものではなく、国家・社会の共有の財産として、みんなが大切に守り育てていくべきものだと思う。
そうであれば当然、社会の共通の理念に基づき、ある程度の自由の制限を享受せざるをえない。
そんなことを考えながら、勝村さんの、患者の立場からのすっきりした話に頷いたり、司会の男性(岩村氏?)が、必死に竹嶋氏に食い下がる姿に感心したりしながら、聞いていた。
最後に(だったかな?)、奈良県の取り組みが紹介された。
武末文男さん(県健康安全局次長)が登場、「え??」と驚くと共に、うれしかった。
彼はたしか、福岡の出身で、以前に私も少しばかり面識があった。
厚労省で活躍していると聞いていたが、今回奈良県の、地域医療への取り組みで紹介されていた。
日本でも、いろいろな壁を乗り越えて、このような住民のための施策が考えられるようになってきたんだな、などそんな感慨にふけりながら、番組を見終わった。
最後の一言、の中で、竹嶋氏が「医師の意識改革が必要だと感じた。」という言葉には、当然だと思うと同時に、もうその段階ではないのでは、と思わざるを得なかった。
開業医の社会的な役割も、大きく変わろうとしている。
在宅療養支援診療所も、その一つだろう。
それだけでなく、社会、地域における医師、開業医の役割、という視点から自分自身のよって立つところを見直さないと、開業医としての立ち直りは、難しいのではないか、とつくづく考えさせられた。
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