心筋梗塞
Sさんは認知症を患っている80歳代の女性。
最近は小さなデイサービスに通うようになって、だんだんと落ち着いてきた。
同じデイサービスの仲間たちとも、楽しく語り合って過ごしている。
足は以前から「よろよろ病」があるといって、室内は杖や伝い歩きで、外は車椅子で移動する。
ときどき調子が悪くなる。
今回も、午後の在宅訪問に出発したばかりの時に、デイサービスの担当ナースからの電話だ。
「Sさんが、背中の痛みを訴えて、嘔吐がある。」という。
不思議なくらいタイミングよく、デイサービスの近くを通っていたので、早速立ち寄ることにした。
Sさんはベッドに横になっているが、意識ははっきりしており
「先生、お久しぶり」といつものとぼけた調子で語りかける。
顔色は蒼白で、唇の色がいつになく黒っぽいのが気になる。
血圧は正常だが、脈拍がどうも速くなったり、遅くなったりしている。
聴診してみると、左肺にラ音が聞かれる。
本人は、ニコニコけろっとしている。
やはりどうも気になる。
クリニックへ運んで、心電図と胸部レントゲンをとってみると、急性心筋梗塞とうっ血性心不全の状態。大急ぎで救急病院へ運んだ。ほっ!
こちらが冷や汗ものだ。
高齢者の心筋梗塞は、症状があまり出ず、時にはまったく胸痛がないこともある。
今までにも何度も経験したことだが、あまりにも本人がけろっとしているので、あやうく見過ごすところだった。
現在、救急病院のICUに入院しているが、担当医からの電話では、
「けろっとして、ICUでご飯をたべています。」とのこと。
きっともう一度復活して、当院の扉を開けて入ってくることだろう。
「先生、よろよろします。」とでも言いながら。
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